80-50問題に必要な早急なネットワーク形成へ
京都造形芸術大学教授 藤澤三佳
今回「市民の会エスポワール」に関わる者として、80-50問題に対応する、京都府における行政、NPO組織、関連の家族会、多様な支援グループ等の早急なネットワーク形成を希望する。
「市民の会エスポワール」は日本において、ひきこもり支援の草分け的存在であり、精力的に、熟練した方法によって支援されてきた山田孝明氏による呼びかけにより形成されているが、今後、このような存在のネットワークをはりめぐらせることがさらに重要である。
現在、ひきこもりの当事者と親の高齢化が進行し、非常に深刻な問題となっている。内閣府の調査から除外され、見えない存在であり視野に入れないようにされていたといっても過言ではない40歳以上の層には、ひきこもり期間が長期化している人々の存在が含まれ、今まで支援につながっていない孤立している家族も多い。
80-50問題は、ひきこもりと親の世代の移行によって当然起こるべきと誰もが予想していたことを看過されてきたことによるものであり、これからさらに大きな社会問題となり続けていくだろう。
その理由は、相談窓口が存在していても、どこにどのように相談するのかわかりにくい場合や、家族の問題として外部に相談することを避けていたり、あるいは相談しても実際には支援として機能が 十分でない等、さまざまである。
今や、待ったなしの早急なネットワーク形成が必要とされ、報道されているような不幸な親子の死亡事故から学び対処を行い、繰り返される等だけは決してあってはならない。親の高齢化による健康問題、経済問題、精神的不安感等も多様なネットワークや支援によって軽減されなければならない。
80-50問題に対応した居場所づくり、緩やかな就労支援等、社会との接点やコミュニケーションを取り戻すこと、家族の孤立を避けることが必要である。京都府は広範囲に及び、地域の特性や支援の必要性もさまざま異なるであろうが、各地域特性に即した、きめ細かいネットワークづくりが必要であろう。
ひきこもり当事者の年齢が50代になっているが、親が高齢化するなかで日々不安も増大している当事者は、自分の声や悩みを聞き取ってくれる支援者や居場所を本当は切実に求めている。親も支援者や同様の体験をもつ家族と接し互いにつながることが、問題の解決にとって非常に大切であり、希望をもって進んで行くことが重要である。