「中年ひきこもり」の深刻な実態

「中年ひきこもり」の深刻な実態-8050問題と向き合って感じる課題

「8050問題」とは
まず「8050問題」とは言葉を代えて別な表現してみると、「さまざまな理由でひきこ
もる中高年の未婚の子どもと高齢の親が同居する家族の諸問題」となるだろう。80代の
親とひきこもっている50代のこの世帯の困難さをもあらわしている。ひきこもりの高齢
化の危惧は2000年代初頭、20年前からひきこもり支援の現場では語られていた。そ
れは家族会などに参加していたご家族が訴える悩みのなかに存在していた。その中のひと
つに20代後半になっても社会にでて働こうとしない子どもを見て、これがいつまで続く
のかと漠然とした不安が語られていた。親子関係が壊れ子どもと会話もできない生活が続
けば不安は尚更だと思われた。親たちもどうしたらいいのか分からず家族会に参加して他
のすこしでも改善した親たちの発言に耳を傾けていたのです。今日語られている
「8050問題」は、高齢者介護の現場から発信されたのです。高齢者の介護の要請で訪
問した家庭で、同居しているひきこもりの子どもを発見した驚きをどのように社会に発信
するか、高齢者介護の現場とマスコミによって8050問題という言葉が作られたのである。介護の支援に入った人がひきこもりの支援となると別の困難さがあるのも事実だろう。
さらに、親の年金だけで生活を支えるのは経済的にも困窮していくのは明らかだ。外側か
らは何もわからず家庭に入ってはじめてわかったひきこもりの子どもの存在などが第三者
にわかったのである。このようにして地域からも孤立している家族が発見されたのだ。今
年の3月に内閣府が40、才以上のひきこもりの統計人数を61万と発表した。驚きとともに社会の中に深刻な問題が顕在化はじめたのである。

ひきこもりが長期化していたひとつの事例
なぜひきこもりが長期化したのを語るのはとても難しい。14年前(2005年)に
70歳代前半の高齢化した親の相談があった。子どもは42歳になり大学卒業後就職し2
年程働き離職した。しばらくしてひきこもるようになり、会話することもない状態が10
年続いていた。相談内容は私たちにとって驚きははかりしれないものだった。8050問
題が確実にこの社会に存在することがわかった事例の始まりでもあった。「健康問題が心
配ですね」と声をかけ、そのことだけで彼のドアを開け健康的に生存しているか確認しま
しょうと提案した。保健師、警察の安全課などと連係し、ご家族が自らドアを開け本人と
語り合うことができたのである。これを契機にひきこもりから抜け出す一歩となったので
ある。

対策の急務が叫ばれている
平成30年3月札幌市で82歳の母親とひきこもりの52歳の娘が遺体で発見されるニ
ュースが報道された。その後、高齢で亡くなった親の死を届けず、死体遺棄で逮捕される
ひきこもりの子どもの報道が全国各地に続いた。新聞紙上では「対策の急務」が叫ばれた
が、しかしこの時点ではまだまだ特殊の事案として扱われていたようだ。
内閣府の61万の発表後時を経ず5月28日に川崎登戸殺傷事件が起きた。バスを待つ
小学生たちが被害にあった。悲しく痛ましい事件だ。加害者は50歳でひきこもり状態で
あり事件後自らの命を絶った。この事件で社会全体がはじめて深刻な実態に気づいたので
ある。過熱する報道の中で8050問題に関心を寄せる一方動揺するご家族もあったであ
ろう。事実、元事務次官息子刺殺事件が練馬区で起こった。川崎事件で犯行に及んだ経緯
や動機などが専門家や識者よって語られたが、あの怒りのエネルギーはどこからきている
のだろうか?加害者は亡くなっているので誰にもわからないが、私はネグレクト(虐待)
ではないかと思っている。内向して無意識の世界に沈殿していた怒りがなんらかの刺激で
火がついたのではと考えている。生育の過程で感じていた区別という差別、それがなぜそのようになったのか自分の心で処理できず、ネグレクト(虐待)という感覚で怒りが沈殿
していていったのだろう。こう考えるとひきこもりが起因しているとはとても考えられな
い。むしろひきこもりを続けていたのが安全であったと私は考えている。

市民の会エスポワールの活動
2017年4月 京都で「40代50代のひきこもりの家族を支援する市民の会」を立
ち上げた。市民の会エスポワールの名称でいまも続いている。ご家族の中にはどこに相談
したらいいのか分からなかったと不安を訴える人もいた。この活動で困難な状況におかれ
た家族の発見が大切だと感じている。8050問題の社会化と、ご家族の悩みを聞き、訪
問活動をして40代50代の「若者」と語り合うときがあるが、すぐに動き出すというこ
ともない。親が望む「働くこと」に関してはハードルが高い。せめて一日一日老親と子ど
もとが安らかな日々を送ってもらうのが私たちのささやかな支援です。

行政支援に望むもの
地域ひきこもりセンターが全国各地に設立されて数年になる。机と電話を置いているだ
けなら多くの相談者を失望させていた。家族会に来た家族の証言からもそのことはわかる
。現在投入されている10倍の予算が必要だ。しかしなぜか近年減少傾向にある。専門家
を配置するより行政全体で8050問題を解決する社会的ノウハウの蓄積がさらに大切だ
。これが大きな課題となるだろう10年近くかかるかもしれない。まったなしの日本社会
が抱えている緊急課題となった。

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